概要
COD(化学的酸素要求量)は河川や湖沼の排水基準に適用する測定項目です。日本工業規格(JIS K 0102)では、CODMnとCODOH、CODCrの3方法が規定されてますが、今回は国内分析ではほとんど使われているCODMnの分析方法をイラストを交えて説明していきます。
作業手順
分析の流れは実際に酸化剤を使って水中(試料中)の有機物を酸化分解します。所定の時間内で有機物を分解した時の酸化剤消費量を計測し、計算によって酸化剤の消費量を、酸素が酸化剤だった場合の酸素量に換算してCOD値を算出する流れとなります。
試料の適量を三角フラスコ(300ml)にとり、水を加えて100mlにする。
試料の適量を三角フラスコに分取します。

ここで適量とは概略値が分かっており、作業手順5の滴定操作で消費される過マンガン酸カリウム溶液量が、4.5~6.5mlの範囲に収まる量を指します。
以下の式より適量 V(ml)を算出できます。

試料のCODの概略値が分からない場合は、採取量の違うパターンをいくつか作り分析することになります。
分析で使用する水は日本工業規格に適合(JIS K 0557に規定するA4の水)するものを使用し、試料の分析に平行してその水に対してもCOD測定を行います。

硫酸(1+2)10mlを加え、振り混ぜながら硝酸銀溶液(200g/L)5mlを加える。
酸性化で反応させるため硫酸(1+2)を加えます。ちなみに(1+2)とは濃硫酸:水が1:2という意味を持っており、例えば濃硫酸10mlと水20mlを合わせた計30mlの液が硫酸(1+2)になります。

測定の妨害となる塩化物イオンを除去するために硝酸銀溶液を添加します。

塩化物イオンの含有量が多い場合は当量分の添加が必要です。ただし硝酸銀溶液の添加量が10mlを超える場合は、500g/Lの硝酸銀溶液で当量分(2ml多めに加える)添加します。
塩化物イオンは硝酸銀と反応して塩化銀として沈殿し、COD測定の影響を防ぎます。

過マンガン酸カリウム溶液(5mmol/L)を加えて振り混ぜ、直ちに沸騰水浴中に入れ、30分間加熱する。
酸化剤となる過マンガン酸カリウム溶液を正確に測り取って(反応量が測定値に反映されるため)添加します。

酸化剤が試料全体に均一に分散するように攪拌し、100℃の水浴で加熱させます。
※ COD濃度に応じて色が、紫 → 茶 → 無色に変化する。

・複数検体を同時に分析する場合は、一度にたくさん水浴に入れてしまうと温度が下がり、反応効率が低下します。
・水浴中の三角フラスコはバランスが崩れやすいため、転倒防止策として重石リング等で対策する。

・試料の液面は水浴の液面以下にする。
水浴から取り出し、シュウ酸ナトリウム溶液(12.5mmol)10mlを加えて振り混ぜて反応させる。
水浴から三角フラスコを取り出し後は反応が進行するため、直ちにシュウ酸ナトリウム溶液を加えます。

シュウ酸ナトリウム溶液の添加後はマンガンイオンが7価→2価に還元されるため、無色になります。

液温を50~60℃にし、過マンガン酸カリウム溶液(5mmol)をわずかに赤色を呈するまで滴定する。
前操作で添加した過剰分のシュウ酸ナトリウム溶液を把握するため、過マンガン酸カリウム溶液で滴定(逆滴定)します。

別に、水100mlを三角フラスコ(300ml)にとり、2~6の操作を行う。
希釈で使用した水(ブランク)試料を使って1~5の操作を行う。

計算方法
滴定ではシュウ酸ナトリウム溶液の過剰分(未反応分)を求めており、その結果を使って酸素量に換算します。

以下の計算式でCODMnを算出します。

ここでCOD分で還元された過マンガン酸カリウム溶液量とシュウ酸ナトリウム溶液の添加後の余剰分(CODMnの算出式のaとb)が、同じ量になるのか考えていきます。

以下にシュウ酸イオンと過マンガン酸イオン、滴定時のシュウ酸イオンと過マンガン酸イオンの反応式をまとめてみます。



滴定反応式より、シュウ酸イオン5 molに対して必要な過マンガン酸イオンは2 molです。この反応比に基づくと、過マンガン酸カリウム溶液と同等の反応を得るには、シュウ酸ナトリウム溶液の濃度を2.5倍にする必要があります。つまり、分析においてシュウ酸ナトリウム溶液12.5 mmolに設定することで、1mlあたりの過マンガン酸カリウム溶液5 mmolと同等の反応量となります。

続いて過マンガン酸カリウム溶液に対する酸素量の0.2について説明していきます。
実際の分析ではマンガンの酸化反応ですが、以下の反応式により酸素が酸化したものとして計算します。

過マンガン酸イオンは1molで5molの電子を受け取るに対し、酸素は1molで4molの電子を受け取ります。換算値は電子のモル数を基準に考えます。

分析で使用する過マンガン酸カリウム溶液のモル濃度(0.005mol/L)倍にして、換算値を算出します。

まとめ
・試料採取では滴定で使用する過マンガン酸カリウム溶液が4.5~6.5mlの範囲内になるように採取量を決定し、分からないものに関しては、いくつか採取量の違うパターンをつくり滴定の範囲内に収まった結果のものを採用する。
・塩化物イオンのマスキングとして硝酸銀溶液を加えるが、塩化物イオンが多い試料に関しては当量分を加える。
・試料の加熱を均一にするため、酸化剤の採取量、加熱時間は正確に行う。また水浴に複数検体を一度に入れると、液温が低下することも注意する。

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